嵐の雪彦山 不行岳北壁「中央ルート」最終ピッチからの脱出
2006/09/11 12:18
2006/07/15
メンバー:初N、あらみ、マメオ
行動計画:「中央ルート」最終ピッチのフリー化整備 記:マメオ
先週末の備中リボルト時に、あらみちゃんの風邪を貰って13日夜には38.9度の熱を出しながらも翌日はボーッと出社した。
元来熱に弱い体質なので休めば一週間は寝込でしまう。病気で一週間も休暇を使うのは勿体ないし、初Nさんに仕事の所を無理をして参加していただいてるのに、今更行けませんとも言えないので頑張った。
当日も高熱の後遺症でフラフラした感じが残っていたが、集合時間8時半の15分前に東屋に着き準備をしながら今日は初Nさんにトップを行ってもらおうと考えていたが歩き出したらトップを歩いていた。「中央ルート」の取り付まで誰に言われるまでも無くトップを行ってしまった。
今日の予定はビレイステーションの付け替えと最終ピッチの整備である。
最終ピッチを含む各ピッチのビレイステーションの設置と付け替えは順調に進み、残すは最終ピッチ半分のボルトの取り付けだけになった所で最終テラスに集まり遅い昼飯を食べた。

この少し前頃から遠くでゴロゴロと雷の音が聞こえていたが、心配する感じでは全く無かった。
昼飯が終わる頃からパラパラと雨が降り出したので素早く片付け最終ピッチの残り半分のラインを決める為にロワーダウンし、フォーローでラインとボルト位置に赤テープ貼った。(この最終ピッチは長く40mはあると思います、又岩も硬くスラブやハングもあり素晴しいロケーションでのクライミングが楽しめます、ボルトの間隔を少しランナウトさせて設置しようと考えています)
これ以降の予定で私は荷物を背負って下のビレイステーションで初Nさんが赤テープの位置にボルトを打ちながら降りてくるのを待ち、あらみちゃんが最後に60mロープを2本繋いで懸垂下降で降りてくる手はずでしたが、私がロワーダウンしている最中から急に雨脚が強くなり風も出てきてとてもボルト設置どころではなくなってきた。
中止して下山しようと思うが声などとても聞こえる状況ではない。
超ベテランの初Nさんのことやから素早く判断して降りてくるやろうと思って上を見たら案の定降りてきた。もう1P下のビレイステーションまで降りると言うがロープがグチャグチャになっている。
乾いていれば多少の絡みつきは簡単に解けるのだけれども雨で濡れて思うように解けない。
益々雨は強くなるし雷も近づいてくる気配に気ばかり焦って中々解けない。気を落ち着けて端から順番に解いていくのに約10分程だと思うが何時間にも感じた。
初Nさんが下のビレイステーションに着いた合図があったので、あらみちゃんにも片方のロープを引いて降りて来る様に合図を送ったが届いたのかどうか中々反応が無い。
雨は益々強くなるし雷は間近で「ピッシー!ドッコーン!パッシー!バリバリー!」と鳴り出した生きた心地がせん。
上で恐怖に打ち震えて動けなくなっているのやろうか…?「キャー!恐いー!」ってなことは絶対に言わんやろうと思うが心配や、もう少し待とうと待ってみるが中々降りてくる気配が無い。
しゃーない登り返して救出に向かおうと思うが「何しにきたん?」って言われたら腹立つし…けど万が一動けない状況であったら「何でもっと早くこんかったん?」と叱られるのも癪やなぁ…と、くだらん事を考えたりしてたけどあまりにも遅いので、様子を見に登り返そうと見上げたら降りてきよる、が、遅い。
「もっと早く降りんかー!」と叫ぶが聞こえる訳もない。やっとこさ降りてきて「ロープが重くて思う様に降りられなかった」としっかりした口調で言ったので安心した。
そのまま下のビレイステーションに降りてもらう「早くしてな…」と心の中で叫ぶ。
雨と雷は収まりそうもない。雨が壁を伝って滝の様になり、さながら修験者が滝に打たれているようや。
しかしこんな長時間滝に打たれる修験者もおらんやろうと訳の分からん事を考えてた。
何もかもずぶ濡れである。着ている服は白いTシャツにパンツとジャージのズボンだけで段々寒く成ってくる。着るものは何も無い。
やはり雨具は必携であるとつくづく思った。
益々壁から落ちてくる水の量が増えてくる川に浸かっているのと同じ状態である。白色のTシャツが黒くなっている。
雷は相変わらず間近で鳴り響いている。おまけに稲妻が右や左に走りよる。
あれに打たれたら一巻の終わりやなぁ…ここで死んだら皆に迷惑かけるなぁ…でも死んだら何も分からんからええか…悲しんでくれる人がおるかなぁ…否!一人喜ぶ奴がおる(稲妻の向うに女房の顔が見えた)絶対先に死なれへん!
てな事を思いながらいると、やっと下から降りてもいいよの合図があった約1時間狭いテラスに居た事になる。
それから初Nさん、あらみちゃん、マメオの順でNO,3のチムニーまで降りる。そこからマメオ、あらみちゃん、初Nさんの順で2回の懸垂でやっとこさ不行沢まで降りた。
一難去って又一難、不行沢の渡渉である。
普段は切れの悪い小便の様な不行沢が短時間で濁流に変わっている。巻き込まれれば瀬戸内海まで流されるやろう。
ハーネスにロープを結んであらみちゃんにビレイしてもらい流れの緩やかな所を短い足目一杯広げて無事渡渉、続いてあらみちゃん、初Nさんも無事渡渉。
地蔵岳東稜の取り付きで装備をザックに入れ靴をアプローチシューズに履き替える。蛭対策でズボンの裾を靴下の中に入れる。
マメオ、あらみちゃん、初Nさんの順で降りるがまだ安心は出来ない。夢前川の渡渉が残っている。
ここは普段でも結構水かさがある。案の定通常の渡渉点は激流で渡れない。
下流も適当な所が無い。少し上流に流れの狭まった所があった。
近くに倒れていた一握り程の太さの木を向う側の岩の間に入れ手すり代わりにしてロープを結んで渡る。流れの強さは不行沢の比では無い。流されたらマジ瀬戸内海直行である。
あらみちゃん、初Nさんの順で無事渡渉しやっと緊張感から開放された。

18時半頃東屋に戻って靴を脱いだらおるはおるは大小の蛭が五六匹、上着を脱いだら腕に一匹、胸と背中に一匹づつ、あらみちゃんも靴の中から二三匹。
「キャー!胸にもいる、取ってー!」と叫ぶが、その時は何故か冷静でそんなとこに手を突っ込まれへんと思っていたら、先に下山していた大阪のパーティーのおばちゃんがあらみちゃんの上着をガバっと持ち上げた。
「あっ!おった!」「ギャー!」と喚きながら自分で蛭を引っ剥がし「にっくき乳の仇」と地面に叩き付け足で形が無くなるまで踏んづけていました。
続いておばちゃんが下も見ときと言ってあらみちゃんのズボンをガバっと引っ張って中を覗き込もうとするのに、つい釣られて覗こうとしたが又も何故か冷静な判断が働いて目を逸らしてしまった残念…
そう言う光景を見ていた大阪パーティーの男性二人が、あらみちゃんに「えらい美人やなぁ…」「こんな若くて美人がクライミングをするなんて信じられへん」と寝ぼけた事をぬかしよった。
「なにゆうとんねん!須磨労山は若くて美人ばっかりやー!いっぺん須磨の集会に来てみー!」とゆうたろうと思たけど本当に来られたら困るのでやめた。
そう言えば初Nさんは一匹もおらず被害無しでした。やはり長年の通い慣れた経験で雪彦は最後に歩くのが良いとご存知だったようです(冗談ですよ^^)。
今回は近場で通い慣れた山と言う事で気象の予報を充分に確認しなかった反省点がありますが、急激な変化にも一人としてパニック陥ることなく冷静に対処出来た事が大袈裟でなく無事に帰れた結果と思います。
又シャガの里でビールを飲みながら凄―く心配して下さったアルツさん、トレトレKさん、洋子ちゃんご心配掛けましてすみませんでした。
それにしても病み上がりの体でありながら常にトップを行きたがり、危険な箇所と見るや我先に突っ込んで行こうとする自分自身に呆れてしまします。
次回はカッパの上着だけでも持って行こうと考えています。
P.S
あらみちゃんを送って家に帰ると21時半頃になっていた。
ただいまーと玄関を開けると、女房が「何処行ってたん?電話しても出ないし…?」いや携帯が水没して壊れてもてんと言うと「泳ぎに行っとったん?山行ったんと違うん?」
いやいや各額然々「ふぅ〜ん???こっちは雷は鳴ったけど雨は降らへんかったで…」
翌16日神戸新聞朝刊に
『猛暑となった兵庫県内は15日午後、山間部を中心に一時的に落雷を伴う激しい雨が降った。この影響で姫路や篠山、丹波市などで約五千世帯が停電したほか、JR線のダイヤが乱れた。…神戸海洋気象台によると、強い日差しと南から湿った空気が入り込んだ影響で積乱雲が発生し、大気が不安定になったという。…』
(同じ時間に雪彦山の東8kmにあるJR播但線寺前駅で雨量計が1時間45ミリの規制値に達した為、寺前−長谷間で不通に成っていた)
過去に恐い思いや恐怖を感じた事は何度かあるが、今回は心底恐怖を感じた。
<山っ子通信59号掲載>
メンバー:初N、あらみ、マメオ
行動計画:「中央ルート」最終ピッチのフリー化整備 記:マメオ
先週末の備中リボルト時に、あらみちゃんの風邪を貰って13日夜には38.9度の熱を出しながらも翌日はボーッと出社した。
元来熱に弱い体質なので休めば一週間は寝込でしまう。病気で一週間も休暇を使うのは勿体ないし、初Nさんに仕事の所を無理をして参加していただいてるのに、今更行けませんとも言えないので頑張った。
当日も高熱の後遺症でフラフラした感じが残っていたが、集合時間8時半の15分前に東屋に着き準備をしながら今日は初Nさんにトップを行ってもらおうと考えていたが歩き出したらトップを歩いていた。「中央ルート」の取り付まで誰に言われるまでも無くトップを行ってしまった。
今日の予定はビレイステーションの付け替えと最終ピッチの整備である。
最終ピッチを含む各ピッチのビレイステーションの設置と付け替えは順調に進み、残すは最終ピッチ半分のボルトの取り付けだけになった所で最終テラスに集まり遅い昼飯を食べた。

この少し前頃から遠くでゴロゴロと雷の音が聞こえていたが、心配する感じでは全く無かった。
昼飯が終わる頃からパラパラと雨が降り出したので素早く片付け最終ピッチの残り半分のラインを決める為にロワーダウンし、フォーローでラインとボルト位置に赤テープ貼った。(この最終ピッチは長く40mはあると思います、又岩も硬くスラブやハングもあり素晴しいロケーションでのクライミングが楽しめます、ボルトの間隔を少しランナウトさせて設置しようと考えています)
これ以降の予定で私は荷物を背負って下のビレイステーションで初Nさんが赤テープの位置にボルトを打ちながら降りてくるのを待ち、あらみちゃんが最後に60mロープを2本繋いで懸垂下降で降りてくる手はずでしたが、私がロワーダウンしている最中から急に雨脚が強くなり風も出てきてとてもボルト設置どころではなくなってきた。
中止して下山しようと思うが声などとても聞こえる状況ではない。
超ベテランの初Nさんのことやから素早く判断して降りてくるやろうと思って上を見たら案の定降りてきた。もう1P下のビレイステーションまで降りると言うがロープがグチャグチャになっている。
乾いていれば多少の絡みつきは簡単に解けるのだけれども雨で濡れて思うように解けない。
益々雨は強くなるし雷も近づいてくる気配に気ばかり焦って中々解けない。気を落ち着けて端から順番に解いていくのに約10分程だと思うが何時間にも感じた。
初Nさんが下のビレイステーションに着いた合図があったので、あらみちゃんにも片方のロープを引いて降りて来る様に合図を送ったが届いたのかどうか中々反応が無い。
雨は益々強くなるし雷は間近で「ピッシー!ドッコーン!パッシー!バリバリー!」と鳴り出した生きた心地がせん。
上で恐怖に打ち震えて動けなくなっているのやろうか…?「キャー!恐いー!」ってなことは絶対に言わんやろうと思うが心配や、もう少し待とうと待ってみるが中々降りてくる気配が無い。
しゃーない登り返して救出に向かおうと思うが「何しにきたん?」って言われたら腹立つし…けど万が一動けない状況であったら「何でもっと早くこんかったん?」と叱られるのも癪やなぁ…と、くだらん事を考えたりしてたけどあまりにも遅いので、様子を見に登り返そうと見上げたら降りてきよる、が、遅い。
「もっと早く降りんかー!」と叫ぶが聞こえる訳もない。やっとこさ降りてきて「ロープが重くて思う様に降りられなかった」としっかりした口調で言ったので安心した。
そのまま下のビレイステーションに降りてもらう「早くしてな…」と心の中で叫ぶ。
雨と雷は収まりそうもない。雨が壁を伝って滝の様になり、さながら修験者が滝に打たれているようや。
しかしこんな長時間滝に打たれる修験者もおらんやろうと訳の分からん事を考えてた。
何もかもずぶ濡れである。着ている服は白いTシャツにパンツとジャージのズボンだけで段々寒く成ってくる。着るものは何も無い。
やはり雨具は必携であるとつくづく思った。
益々壁から落ちてくる水の量が増えてくる川に浸かっているのと同じ状態である。白色のTシャツが黒くなっている。
雷は相変わらず間近で鳴り響いている。おまけに稲妻が右や左に走りよる。
あれに打たれたら一巻の終わりやなぁ…ここで死んだら皆に迷惑かけるなぁ…でも死んだら何も分からんからええか…悲しんでくれる人がおるかなぁ…否!一人喜ぶ奴がおる(稲妻の向うに女房の顔が見えた)絶対先に死なれへん!
てな事を思いながらいると、やっと下から降りてもいいよの合図があった約1時間狭いテラスに居た事になる。
それから初Nさん、あらみちゃん、マメオの順でNO,3のチムニーまで降りる。そこからマメオ、あらみちゃん、初Nさんの順で2回の懸垂でやっとこさ不行沢まで降りた。
一難去って又一難、不行沢の渡渉である。
普段は切れの悪い小便の様な不行沢が短時間で濁流に変わっている。巻き込まれれば瀬戸内海まで流されるやろう。
ハーネスにロープを結んであらみちゃんにビレイしてもらい流れの緩やかな所を短い足目一杯広げて無事渡渉、続いてあらみちゃん、初Nさんも無事渡渉。
地蔵岳東稜の取り付きで装備をザックに入れ靴をアプローチシューズに履き替える。蛭対策でズボンの裾を靴下の中に入れる。
マメオ、あらみちゃん、初Nさんの順で降りるがまだ安心は出来ない。夢前川の渡渉が残っている。
ここは普段でも結構水かさがある。案の定通常の渡渉点は激流で渡れない。
下流も適当な所が無い。少し上流に流れの狭まった所があった。
近くに倒れていた一握り程の太さの木を向う側の岩の間に入れ手すり代わりにしてロープを結んで渡る。流れの強さは不行沢の比では無い。流されたらマジ瀬戸内海直行である。
あらみちゃん、初Nさんの順で無事渡渉しやっと緊張感から開放された。

18時半頃東屋に戻って靴を脱いだらおるはおるは大小の蛭が五六匹、上着を脱いだら腕に一匹、胸と背中に一匹づつ、あらみちゃんも靴の中から二三匹。
「キャー!胸にもいる、取ってー!」と叫ぶが、その時は何故か冷静でそんなとこに手を突っ込まれへんと思っていたら、先に下山していた大阪のパーティーのおばちゃんがあらみちゃんの上着をガバっと持ち上げた。
「あっ!おった!」「ギャー!」と喚きながら自分で蛭を引っ剥がし「にっくき乳の仇」と地面に叩き付け足で形が無くなるまで踏んづけていました。
続いておばちゃんが下も見ときと言ってあらみちゃんのズボンをガバっと引っ張って中を覗き込もうとするのに、つい釣られて覗こうとしたが又も何故か冷静な判断が働いて目を逸らしてしまった残念…
そう言う光景を見ていた大阪パーティーの男性二人が、あらみちゃんに「えらい美人やなぁ…」「こんな若くて美人がクライミングをするなんて信じられへん」と寝ぼけた事をぬかしよった。
「なにゆうとんねん!須磨労山は若くて美人ばっかりやー!いっぺん須磨の集会に来てみー!」とゆうたろうと思たけど本当に来られたら困るのでやめた。
そう言えば初Nさんは一匹もおらず被害無しでした。やはり長年の通い慣れた経験で雪彦は最後に歩くのが良いとご存知だったようです(冗談ですよ^^)。
今回は近場で通い慣れた山と言う事で気象の予報を充分に確認しなかった反省点がありますが、急激な変化にも一人としてパニック陥ることなく冷静に対処出来た事が大袈裟でなく無事に帰れた結果と思います。
又シャガの里でビールを飲みながら凄―く心配して下さったアルツさん、トレトレKさん、洋子ちゃんご心配掛けましてすみませんでした。
それにしても病み上がりの体でありながら常にトップを行きたがり、危険な箇所と見るや我先に突っ込んで行こうとする自分自身に呆れてしまします。
次回はカッパの上着だけでも持って行こうと考えています。
P.S
あらみちゃんを送って家に帰ると21時半頃になっていた。
ただいまーと玄関を開けると、女房が「何処行ってたん?電話しても出ないし…?」いや携帯が水没して壊れてもてんと言うと「泳ぎに行っとったん?山行ったんと違うん?」
いやいや各額然々「ふぅ〜ん???こっちは雷は鳴ったけど雨は降らへんかったで…」
翌16日神戸新聞朝刊に
『猛暑となった兵庫県内は15日午後、山間部を中心に一時的に落雷を伴う激しい雨が降った。この影響で姫路や篠山、丹波市などで約五千世帯が停電したほか、JR線のダイヤが乱れた。…神戸海洋気象台によると、強い日差しと南から湿った空気が入り込んだ影響で積乱雲が発生し、大気が不安定になったという。…』
(同じ時間に雪彦山の東8kmにあるJR播但線寺前駅で雨量計が1時間45ミリの規制値に達した為、寺前−長谷間で不通に成っていた)
過去に恐い思いや恐怖を感じた事は何度かあるが、今回は心底恐怖を感じた。
<山っ子通信59号掲載>


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